純米吟醸 『じゃんと恋・魚津』

それは一言からはじまった

発売以来大好評の魚津商工会議所青年部の酒、純米吟醸酒「じゃんと恋・魚津」。
平成8年当時第18代会長として就任した長岡酒店社長(魚津市)長岡昭男君が、「今年、俺達の酒を造りたいと思う…。のたった一言から事は始まりました。

地場にこだわる

平成8年、魚津商工会議所青年部では長岡会長のスローガン「魅了される地場(まち)造り」のひとつとして何かできることはないかと模索しておりました。そんな中地元魚津にとことんこだわり、魚津の水、魚津の米、そして魚津の酒蔵で
醸した地酒を造ろうとの結論にいたり、早速新委員会「地場産委員会」を発足、活動に移っていきました。
すべてが「魚津」の酒、まずは原料となる米。協力していただける農家を探し、辿り着いたのが未だ豊かな自然を残す市内、長引野地区でした。長引野営農組合組合長、木村隆太郎様に我々の企画と熱い思いを伝えお願いしたところ、
3反部(約3000㎡)の田んぼをこの酒のための米専属としていただけるということになり、快く賛同していただきました。
次は酒蔵です。こちらはもちろん魚津市内の本江酒造株式会社様(宮内謙吉社長)に依頼。こちらも快くご賛同いただき、専用のタンクを用意していただけるという御厚意までいただきこの企画は順調に走り出しました。

魂をこめて

ただ本江さんにお任せして、酒を造っていただき、売っていただくのでは意味がありません。我々は製造業からサービス業まで幅広い業種、分野の会員により構成されています。この特色を十二分に生かし、その熱意と行動、そして英知とネットワークすべてをこの酒に、この事業に含ませてこそ地場(まち)の活性化に貢献できると信じ、この酒に命を吹き込む企画を委員会では喧喧諤諤、構想していきました。宮内社長の勉強会などを催し、酒についてみんなで学んでいくうちに酒造りといううものの奥の深さ、魅力に驚きながらこの酒の未来に大いなる期待をもつようになりました。

田植祭

平成8年5月12日。懲りだすと止まらない(?)青年部はこの田圃で豊作を祈念する神事「田植祭」を行うことを企画しました。前日より田圃全体を竹で囲い、縄を張り、御幣を垂れ明日を待ちました。当日はもちろん地元魚津神社より神主さん(高倉様)に来ていただき、テント内に神棚を構え、来賓に魚津商工会議所会頭はじめ、市商工観光課様、婦人部会長他多くの方々に参列いただきました。また何事が…と地元長引野の皆さんはじめ、市内より多数の方が見学にいらっし
ゃいました。注目は「早乙女」役として、8年度のミス・スリークイーン(ミス・魚津、ミス・蜃気楼、ミス・たてもん)にかすりの着物に手っ甲、脚半(きゃはん)という昔乍らの装束に扮していただき、実際に田圃に入って1,2穂植えてもらいました。もちろんミスだけでなく、神事のあと「田植え体験」と題し、青年部会員も田圃に入りどろんこになって、手で田植えをする企画も行われました。普段農業とは縁遠い会員もいて、いい体験ができたと、好評でした。この様子はテレビ、地元
新聞にも大々的に取り上げていただき、第1段企画としては大成功だったようです。

その名は「じゃんと・恋」!

とことん魚津にこだわるこだわるからには、魚津らしい名前、それもこれから飲んでいただく魚津の皆さんに決めていただこう、というわけで酒の名前は一般公募とし、ラジオ、市広報誌を通じ幅広く呼びかけました。募集後、我々の予想をはるかに上回る200通近い応募があり、委員会メンバーは反響とこの酒に対する関心に驚きを隠せませんでした。皆さん期待して、楽しみにしてくれているのだな、と感激したものです。やはり「蜃気楼…」とか、「たてもん」といった関係が多かったのですが、委員会で最終的に5つほどに絞られ、非常に選考には苦しみましたが、最後の決め手は「魚津らしさ」でした。その名は「じゃんと・恋」。市内在住の主婦、岡本道子さんの作品です。魚津の夏にはなくてはならない「せりこみ蝶
六」。そのなかに「じゃんとこい!じゃんとこい!!」というはやしてがあり、意味は「たくさん来い。」とか「みんなで来てくれ。」だそうです。まさにこの酒の我々のイメージにぴったりです。そしてうまくあてた、「恋」の一文字が、「男と女2人の間にこの酒が…。」という雰囲気をだしてくれている。いいですね。
岡本さん最高のネーミングありがとうございました。

抜穂祭

名前を募集している間、大きなイベントがもう一つ行なわれいました。天候にも恵まれ、一穂も倒れることなく「じゃんと恋」の米はすくすくと成長しいよいよ実りの秋、稲刈りの時期が来たのです。9月1日「抜穂祭」と銘打ち、田植祭と同様にこの収穫を感謝する神事です。活躍していただくのは、夏の間に新しく決まった9年度のミス・スリークイーンで、今度は「刈女(かりめ)」という役柄で、また田圃に実際入っていただき装飾を施した鎌を片手に1,2穂手で刈り取るという設定です。今でも忘れませんが、神事が始まり「降神の儀」(神様が天上から、降りてくる。)のところで、いままで無風で静かだった田圃に、神主さんが声を上げ、太鼓を叩くとざわざわと少しづつ風が吹き、稲穂がさわさわと揺れ出したのです。(ほんとですよ!)まさに我々のもとに神様が降りてきたのでは…。この収穫されたお米(コシヒカリ)は、正当に特別なルートで「じゃんと恋」専用の酒米として、本江酒造さんに収められ冬の仕込みを待ちます。

仕込み体験(平成9年2月7日)

とことんこだわる青年部は、年が明け冬になると本江酒造さんの工場にお邪魔し、「じゃんと恋」の仕込みを見学し、仕込み作業に参加させていただきました。本当にお邪魔だったと思いますが、酒造りの工程に参加し「酒は生きている。」と実感しました。タンクの中でぷつぷつと泡をだす姿はまさに呼吸をしているようで、社長のご説明に酒造りの奥の深さを学び、いい体験をさせていただきました。しかも工場では、いま搾りたてという「生酒」を正味させていただき昼間から少し顔を赤らめいい気分に…。この日から、じっくりと熟成期間に入りあとは完成を待つばかりです。大平山涛先生名前も決まり、委員会ではラベルのデザインを検討し続けていました。「じゃんと恋」にふさわしいラベルとは…。和風、墨で、コンピュータ・グラフィック、自分たちで書く…。等々様々な意見の中で、これもひとつ魚津にこだわるという点で、魚津市在住もしくは、出身のプロにお願いすることになり、浮かび上がったその人は「大平山涛先生」。知る人ぞ知る、魚津市出身の書道の大家です。このビック・ネームにお願いしたところ、快く引き受けていただき「じゃんと恋」はまたひとつグレード・アップしたのです。